ゴーストブースター

私は今では普通のおじさんですが、結婚する前は結構オタクっぽいところがありました。
もちろん艦船や模型もそのうちの一つですが、アニメにも萌えておりました。
特に当時のアニメの「うる星やつら」は最も好きなアニメでした。

まだビデオが普及していると言えない頃です。(※1)
生のビデオテープもハイグレードクラスになると定価で4〜5000円位していましたが、「うる星やつら」には惜しみなくハイグレードクラス(※2)
のビデオテープを使いました
ビデオデッキも、当時最高峰と言われたビクターのHR−D725(※3)(定価が確か298,000円)を購入しました。
しかし、しかし問題があったのです。
それは、ゴースト(2重映り)です。
特に私の住んでいた社員寮は、フジテレビのゴーストがひどく、くっきりとゴーストが入ります。
いくら良いデッキを使おうが、いくら良いテープを使おうが、元画質が悪いのではどうしようもありません。

この為、テレビのアンテナには位置調整から何からいろいろと気を配りました。

10,000円近くの高級アンテナ取付。
2〜3ヶ月毎のアンテナの取替。
ノイズに強いアンテナ線の取付。
ブースターの取付
2重のアンテナ設置。

どれも多大の効果を上げるとは言えませんでした。

そんなこんなで、私は寮の屋上に登っては、東京都心の高層ビル街に向かい、怒りをぶちまけていました。

そして数年が過ぎ、私も所帯を持つ為社宅に入居することとなりました。
結婚すれば金も使えなくなるし、この際とAV機器を刷新する事としました。(※4)

そこで以前から計画していた事を実行する事にしました。
テレビは
「プロフィールHG」の27型(※5)だな。

これは当時知る人ぞ知る名モニターで、放送局でも使われており、テレビのニュースなどではスタジオ内の映像で良く見かけました。

この製品は単品ではモニター機能しかありませんが、それでも24万円位します。テレビとして使うには、チューナー及びスピーカーも別途用意しなければなりません。
もちろんプロフィール専用のチューナーがあります。が、私は、チューナーは
東芝のGT−80を購入しようと決めてました。

この東芝のGT−80は、NHKと東芝が共同して開発した製品で、別名
ゴーストクリーンチューナーと言われてました。
AV系の雑誌でもゴースト除去の最終手段として紹介されたりしています。
ただ値段は125、000円。プロフィール専用チューナーの倍します。

しかし
GT−80さえあれば、クッキリしたゴーストのない「うる星やつら」が見る事が出来る。
この思いが私を秋葉原に走らせました。 が、どの店にも置いてません。
ある店で聞いたら、特殊な製品なので注文となるとの事。
しかたないので、その店で注文し社宅まで届けて貰う事になりました。

2週間後、到着。

セッティングが終わりました。
チューナーとモニターの電源をオンにします。
ゴーストクリーンボタンはオフの状態で、8チャンネルに切り替えました。
モニターにはゴーストで2重になった画像が映し出されます。
はやる心を抑えつつゴーストクリーンボタンをオンにしました。
説明書によるとTVの電波を検知し10秒後にゴーストが軽減されるとの事。

10,9,8,7,6,5,4,3,2,1、0・・・

・・ゴッ、、ゴーストブースター?

そこにはくっきりと、5重、6重になったゴーストが映し出されてました。


そうです、ものによってはゴーストが改善されないばかりかひどくなる場合もあると説明書に書いてありました。
モニターには、ゴーストが幾重にもブーストされ重なった無惨な映像を映し出していたのです。

でも私はこのチューナーの初期不良かと思いました。
しかし、NHKとNHK教育で発生していたゴーストは、ゴーストクリーンボタンを押すと軽減されました。
なるほど、NHKとの共同開発と言う事だけはあります。
製品は十分機能していました。

こうして、ゴーストと戦った私の青春は終わりを告げました・・・
その後GT−80はゴーストクリーン機能を使うこともなく、単機能チューナー
(※6)として製品寿命(※7)をまっとうしました。

(※1) 私がビデオデッキを初めて買ったのは昭和54年。最初はソニーのベータビデオでSL-HF8500でした。この頃2時間の生ビデオテープの値段は定価で4,000円くらいでグレードなどもありませんでした。渋谷の一風堂ではテープが2割引の3,200円で売っていたのでよく買ってました。
(※2) 後半になるとハイグレードどころかプロ用で録ってました。気合いが入ってましたよ..ハッハッハ。
(※3) プロジェクトXでもやってましたので今では知らない人は少ないと思いますが、ビクターはVHSの開発メーカーです。ベータの音声Hi-Fi化に対抗してVHSもHi-Fi規格を制定しましたが、その盟主ビクターが開発メーカーとしての威信をかけて世に送り出した VHS Hi-Fiの第一号リファレンス機こそが、この HR-D725でした。当時のAVマニアの憧れだったのは言うまでもありません。
(※4) 別の話を読んでお気づきでしょうが、この時私はモニター、チューナー、レーザーディスク、ビデオ(ベータプロ SL-HF900)、CD(DP-50II ディスクマン)を同時に購入してます。
(※5) ソニーは業務用の映像機器を手がけており、このプロフィールHGモニターは業務用としても使用できるスペックでした。パッケージの中には回路図まで入っておりました。
(※6) 専用チューナーでないのでモニターとの連動機能はありません。その点からすると機能は専用チューナー以下でした。値段は倍で専用チューナー以下。えらい買い物でした。
(※7) このチューナーはトランジスタの塊のようなチューナーの為、壊れた時期も早かったです。まあ、早く壊れてくれて良かったですけどね。

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