ビデオディスク戦争(予備知識編)

皆さんはビデオディスク戦争と言うのを知っていますか?

私も正確には憶えていないのですが、今から20年くらい前でしょうか。
家電業界は、当時はレーザービジョンといわれたレーザーディスクの陣営と、ビデオホームディスクと呼ばれたVHDの陣営の2つに分かれてシェア争奪の熾烈な戦いをしていました。(※1)
                                
しかしレーザーディスク陣営で、当時プレイヤーを生産していたのはパイオニア 1社だけで、その他のメーカーはパイオニアの製品をOEM販売しているのみ。つまり、パイオニア以外のメーカーは様子見という状況でした。


レーザーディスクには、水平解像度400本という放送局並みの高画質(※2)と非接触によりメディアが劣化(※3)しないという長所がありましたが、反面記録方式にCAVとCLVの2つがあり、CAVはトリックプレイが出来る物の30分しか記録できず、逆にCLVは1時間記録できる物のトリックプレイが出来ないというものでした。
またプレイヤーの価格がVHDに比較して高く、ソフトのラインナップもVHDに比較して貧弱でした。(※4)

対して、VHD陣営にはビクター、松下、東芝、シャープという日本の大手家電メーカー4社が中心となってプレイヤーを生産し、「日本の大手4メーカーが作っているから将来も安心」(※5)というのが売り言葉でした。(嘘つき!)

VHDには、CAVにて1時間記録が出来るので、どのディスクでもトリックプレイが出来、またプレイヤーの価格もレーザーディスクに比べ安く、ソフトのラインナップも充実していました。
しかしホームビデオ並みの水平解像度230本の画質(※6)と、接触式の為メディアの劣化が発生する(※7)のが短所でした。

当時アニメファンであった私も、友人達と共にどちらのディスクを買おうかとディスカッションしていたのは言うまでもありません。、やはり画質的にもメディアの劣化の面からもレーザーディスクの方に軍配が上がりそうだったのですが、ソフトの面で決定打に欠けてました。

しかし、遂に時は来ました。
キラーソフトとも言うべきソフトが、レーザーディスク陣営にリリースされたのです。

その名は「うる星やつら オンリーユー」

さすが、パイオニアです。
こういうAV機器を真っ先に買って人柱になってくれるのはアニメマニアしかいないと踏んだんでしょう。しかも当時のアニメマニアのコアな連中が好きな物と言ったらうる星やつらだろうと思ったんでしょう...図星です。
私も、何人かの友人達も買いました。プレイヤーもないのに・・・

でも、この期を境にビデオディスク戦争も流れがレーザーディスクへと傾いてきたように思えます。
レーザーディスク陣営はCDとのコンパチブルタイプを発表(実はCDはレーザービジョンのオーディオ規格でレーザーディスクより後発の製品です)、そして音声のデジタル化が付加されたあと、ヤマハより10万を切るフルスペック機、LV-X1(だったと思う)が発売され、ソニーなども自社製品を投入してきました。ソフトもVHD陣営と独占契約が切れた映画作品がレーザーディスクでもリリースされ、更に勢いがついてきました。

VHD陣営は、トリックプレイが出来るのを前面に出し売り上げを延ばそうとしましたが、レーザーディスク陣営が画像メモリーを搭載する事でCLVでもトリックプレイが可能としたため、その機能についての性能差は無くなってしまいました。いや、むしろ同じトラックを何度も読み出す為、VHDの劣化はより早まってしまい、性能的には不利となってしまいました。

そこでVHD陣営は、低価格化、3D化、高画質化等(※8)を図りましたが、結局市場には受けいれられず、VHD陣営に参画していたメーカーも次第にレーザーディスク陣営に流れ、東芝、シャープ、松下もレーザー方式に切り替えた為、最期には提唱元のビクター1社だけ(※9)となってしまいました。

今ではレーザーディスクもDVDに置き換えられようとしていますが、まだまだレーザーディスクを持っている人は多いでしょう。

でも、VHDで未だに稼働している物はあるのでしょうか?
いや、ソフト自体見る事が出来る物があるかどうか....

VHDの残した唯一の遺産はのりピー酒井法子:VHDマガジンの第一号アイドルだけだったりして....
(※1) ちょうど普及のVHS対性能のベータの戦いみたいな構図でした。ただ水平解像度が倍近くあって性能差が大きすぎましたし、ソフトも半永久性に使えると言うことで、枢軸軍であったレーザー陣営が勝ってしまいました。まあ、ビデオディスク自体が映画やアニメなどのオタク系マニアにしか受けない製品であったのがVHD陣営の敗北に繋がったと言っても良いでしょう。
(※2) 水平解像度400本というのは正確ではありません。CAV(周速度一定)とCLV(線速度一定)でも違いますし、CAVについては外周と内周でも違いました。もっとも良い画質はCAVの最外周で430本を越える画質でしたが、CLV等は380本程度とも言われてました。ただレーザーディスクは解像度は高いのだけど、S/Nや色のりについては劣ると言われてまして、ヤマハのLV-X1は水平解像度こそ430本という性能でしたが、S/Nが悪く、画面はノイズが凄くて見られたものでないという噂もありました。
(※3) 実はレーザーディスクは、レーザービットの銀メッキ面を透明アクリルで覆っているのですが、アクリル自体に吸湿性があるので湿気が盤表面まで浸透し銀メッキ面が錆びで侵されてしまう事があります。このためレーザーディスクの寿命は10年程度と言われています。私の所有するLDでも既にお釈迦になっている物もあります。でも、20年以上何とか映ってるのもあるのも事実です。尚、当初CDはアクリルでなくポリカーポネィトで覆われているので半永久的に使えると言われてましたが、これもレーザーディスク同様湿度劣化で使用できなくなるようです。
(※4) VHS陣営が大手映画会社とビデオディスクの独占販売契約をしていた為、最初の頃レーザーディスク陣営の映画のラインナップは少なかった。
(※5) まあ、性能差は歴然としてましたから、こんな事でも言わなきゃ売れなかったんでしょうね。
(※6) ここまでVHDの画質を悪い、悪いと書いてきましたが、実はS/Nと色のりについてはVHDの方が良いと言われてました。
(※7) VHD陣営はVHDは再生時高速回転をするため針は浮いているので、非接触状態でありメディアの劣化は少ないと説明していました。また寿命も1万回程度はあると言ってました。しかしカラオケに置いてあるVHDで良くかかる曲ほど画像が酷いのを見ると、かなり眉唾の説明であると言わねばならないでしょう。 またVHDはゴミ等の異物にも弱く、カラオケ店等ではタバコの煙でディスク表面を痛めるものもあったようです。 
(※8) 3Dメガネによる立体化も商品化されましたが、全く受けませんでした。これはソフト側で立体を生かしたものが無かったからでしょう。またレーザー並みの高画質動画とレーザーディスク以上の制止画が出来るVHDも開発されましたが、商品化まで行かなかったはずです。ソフトの企画ものについては3,000円台のものもあったと思いましたが、その企画自体が面白くなく受けませんでした。
(※9) 日本ビクターは、最後までレーザーディスクプレイヤーは出しませんでした。


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