5.色のスケール性【未完】

 例えば船のスケールモデルを作る場合、その船の形をそのスケールで縮小し作成します。しかし塗色については結構実物の色をそのまま塗る場合が多いと思います。はたしてそれで良いのでしょうか?スケールモデルを見るということは、実物をある程度の距離から離れて見ている事なのですから、当然それに伴い塗色についても色彩の変化を受けていると考えられます。という事で、素人ながら数点の資料を元に考察したいと思っています。

1.艦艇色が灰色になった時期

本来この項は実艦の塗装についての考察の項で行なうのが妥当かもしれませんが、色のスケール性にもっとも影響する部分でもあるので、あえてここで述べさせて頂きます。
世界の艦船 1980年5月号 No.281 で瀬名堯彦氏の軍艦の塗装/4 カモフラージュの話の記載によると、艦艇が灰色に塗られたのは1898年米西戦争の頃で、たまたま米艦隊の一艦が灰色に塗色したところ(それまでの艦艇は純白だったそうです)迷彩効果が認められ採用されたということです。
また灰色という色は、汚れが目立たず、艦艇の威容も維持し、尚且つ遠くに離れると艦型をぼやかすカモフラージュ効果もあったので、この戦争以降の19世紀末から20世紀にかけて各国の艦艇にも採用されて行きました。
日本海軍では1888年頃より鉄製軍艦に採用されはじめ、1903年に対ロシア艦隊用に戦時塗色として用いられました。
英米海軍は、第一次大戦中にカモフラージュ塗装の研究を盛んに行なわれ、戦後は下火になったもののアメリカ海軍では1935年より迷彩の研究を再開しNRL(海軍研究所)で実験を繰り返し行ないました。この結果暗灰色・標準灰色・明灰色の3種類で研究が続けられました。遠方から見た場合、明灰白色は空の色に溶け込みやすく、また暗灰色は海との境が目立たなくなる効果により秘匿性と幻惑性が高い事が判りました。
このように艦艇に塗られた灰色という色は1種のカモフラージュでもあり、極めて空や海の背景に溶け込みやすい隠匿性があります。これより、模型用に艦艇色を調合する場合は、実際の塗色より薄めの塗色にした方がスケール感がでてくると思われます。

2.色とは

平井敏夫著の「色をはかる」(出版元日本規格協会 1989年発刊)では、JISより色は以下のように定義されてるそうです。(尚、これは改定前の資料で、現在のものより的確に表現されているという事なので、これを記載いたしました。

JIS規格 Z8105(色に関する用語)、Z8120(光学用語)
(1)目にはいる放射の分光組成の差によって性質の差が認められる視知覚の様相。
(2)上記の視知覚を起こす放射の特性。
(3)前記の視知覚を起こす物体の特性。

3.色により受ける感覚...以後続く